Sicilia 2008

旅日記 6日目(2008/01/01)-02

... トラーパニは、ものすごく陽射しが強かった。
気温はもちろん冬の気温なのだろうけれど、陽射しだけは真夏と同じくらいの強さで、トラーパニという街がアフリカに最も近い街なのだと実感した。

駅舎のトイレに寄ってから、駅前のロータリーに出ると、そこは家族や知人を迎えに来た風の車が2,3台停まっていただけで、タクシーは一台もいなかった。

でもまぁ、それくらいのことは南イタリアでは、よくあることだ。

トラーパニからエリチェまではバスも出ているけれど、せっかくなのでロープェイで行くことにしていた。(←私はバスは酔うので苦手だし。)
しかし、そのロープウェイが出ているのは、トラーパニの街外れで、そこまで市バスで移動することになるらしい。
そして、そのバスが出ているのは、駅から少し歩いた所にある広場ということまでは、事前に夫がネットで調べてきてあったのだけれど、その近くにバスのチケットを買えるような場所があるのかどうかとか、何番のバスに乗るのかなどの情報は仕入れていなかった。
それだったら、乗り場まで歩いていった方が早いかも…思ったのだけれど、私達が持っているガイドブックの地図には、ロープウェイ乗り場が載っていなかった。(地図の圏外らしい。)

とりあえず、どっちに向かったらいいんだろう?などと話しながら、ガイドブックをガン見し話しこんでいたら、ロータリーでおしゃべりをしていたおじいさんが、声をかけてきてくれた。
それなので、「エリチェ、フニビア」など単語の羅列で質問すると、なんとなく意味を分ってもらえたようで、通りまで私達を連れていってくれて、「この道を真っ直ぐ行って、その先を曲がって…」と一生懸命説明してくれた。

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イタリア語だったので、何番目の道を曲がるのかなどは全く分らなかったけれど、とりあえず駅を出て進む方向が分ったので、『半分だけ分りました』顔のまま、「どのくらい歩く?遠い?」と聞くと、「3.5キロくらい、遠いよ」と答えてから一瞬思案顔したのち、「よし分った。こっちにおいで!」というようなことを言って、ロータリーに停めてあった自分の車の前まで連れていってくれて、扉を開けて乗るように言ってくれた。
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鉄道のトラーパニ駅前

知らない人の車に乗るのも…と思ったけれど、最初は一生懸命、ロープウェイ乗り場の場所を教えようとしてくれていたのだから、悪い人ではないだろう…と判断し、お言葉に甘えて乗せてもらうことにした。

車は駅前を過ぎ、緩やかな上り坂の大きな通りに入って山に向かって進んでいった。
その正面に見えている山の上を指差し、「あの上がエリチェだよ」とか「あそこにフニビアが見えるでしょ」など、いろいろと教えてくれた。
エリチェ行きのロープウェイ乗り場までは、「遠いよ」という言葉通り、結構距離があったので、「おじいさんが単なる好意で送ってくれたとしても、お礼で10ユーロくらい払ったほうがいいよね」などと話しているうちに、乗り場に到着した。
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ロープウェイ乗り場

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乗り場の横で停めてくれた車を降りる前に、「いくらか払いましょうか?」と言うと、躊躇することなく「10ユーロ」という答えが返ってきた。
「やっぱり単なる好意ではなく、お金は必要だったのね」と一瞬ちょっとだけガッカリしてしまったけど、おじいさんの車に乗せてもらえず、地図に載っていない乗り場へ歩いて行こうとしたら、かなり苦労したと思うし、私達も請求されなくてもお礼で払おうと思っていた金額だったので、気持ちよくそのお金を手渡した。

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確かに、駅前からメータータクシーに乗れたら、もっと安かったかもしれないけれど、今まで他の街でメーターのないタクシーに乗った時は、近距離でも10ユーロを請求されることが多かったので、違和感のある金額ではなかった。
それにもしかしたら、私達がいくら?と聞かなかったら請求はしなかったかもしれないし。
(…そんなことはないかな?おじいさんの日々の小遣い稼ぎなのかもしれない。)

まぁ、お金をとるにしても、最初からそれが目的で声をかけてきた訳ではなく、初めは一生懸命歩いていく方法を教えてくれようとしていたのだから、本当にいい人なのだと思う。
「帰りも迎えに来ようか?」みたいなことも言っていて、「今日はエリチェに泊まるから」と断ったら、すぐに納得していて、「じゃあ明日迎えに来ようか?」というようなことはなかった。
いくらですか?と聞いたら、躊躇なく「10ユーロ」と答えていたので、今回初めてしたというより、時々している趣味の小遣い稼ぎなのだろうけど、しつこく勧誘する訳ではないので『親切心』が先に来ているような気がして、気分が悪くなるようなことは全くなかった。
帰りの迎えも私達を心配して言ってくれたのかも…なんて気にさえなる。

おじいさんは、運転席から降りて後部座席の扉を開けてくれたので、外で握手をして、一緒に記念写真を撮ってお別れした。

→ 次はロープウェイ


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