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 Spain+Tangier 2012

旅日記 3日目(2011/12/25)-02

メインビルディングからフェリーに乗るためのボーディングブリッジがつながっている通路へ向かったのだけれど、ブリッジの手前にいた係の人にチケットを見せたら「これはボーディングパスではなくて予約券だから、ここで待つように」と言われてしまった。
チケットを買った時にそんなことは言われなかった気がするのだけれど、聞いていなかったのか聞き取れなかったのだろうか。

その係の人に自分で引き換えにメインビルディングに戻ったほうがいいのか?と聞いても、係のおじさんはアミーゴと愉快に携帯電話でおしゃべり中で「そこで待て」というジェスチャーをするのみだった。
考えてみたら出国審査をしてしまっているので、私達がチケット売り場に戻って引き換えることは出来ないので誰かが来てくれるのだろうけど、その係の人が待てど暮らせど現れない。

他の乗客はちゃんとボーディングパスを持っていたようで、アミーゴと電話中のおじさんがチケットを確認して次々と乗船していく。

メインビルディングからの通路
みんなちゃんと
ボーディングパスを持っていたようです

最初この通路で待たされていたのは私たちだけだったので置いていかれるのでは?と不安になっていたのだけれど、出航5分前くらいに駆け込んできた10人くらいが、まだまだアミーゴと電話中のおじさんのジェスチャー「そこで待て」で足止めをくらったので少しだけ心強くなっていた。

しかし、いよいよ出航の17時ジャストになってしまった。
その瞬間、私たち以外の10人がドッと係のおじさんに詰め寄り、強引に船に乗り込もうとし始めたので、あわてて私たちもそのあとに続いた。
係のおじさんは、時間だから諦めたのか先頭の10人の勢いに負けたのか、私たちの持っていた予約券のようなものを受け取ってブリッジを渡らせてくれ無事乗船することができた。(ちなみに最後まで係のおじさんは携帯電話でアミーゴとしゃべり続けていました。)

やっとこの通路とさよならです

船の中を進んでいくと、廊下に人がいっぱいあふれている所に出た。
満席で進めないのかなと思ったのだけれど、夫曰くこれは入国審査を待つ人の列なのだそう。
この船でタンジェに入港する場合、入国審査は船の中で行われるのだ。

夫がネットで得ていた情報では、いざ出航して入国審査が始まってから並ぼうとすると既にものすごい行列ができてしまっていて、タンジェに着くまでに入国審査が受けられず、まぁどうにかなるだろうなんて軽い気持ちで下船すると不法入国になってしまい面倒なことになるらしい。
どんな風に面倒なのかは分からないそうだけれど、面倒になるのは嫌なのでその人だかりの最後尾で待つことにした。

その後1時間経っても出航する気配がなかった。
入国審査待ちで並んでいたけれど疲れてしまって上階へつながる階段に座り込む人も出てきて、今度は上の階から降りてきた人がその座っている人の後ろに並んでしまうし、私たちが待っていたのとは反対側から並び始める人も出てきて、四方八方に入国審査待ちの人が広がっていき完全に無秩序状態になっていた。(一番最初に順番待ちの列となったと思しき私達がいた場所も、私達が着いた時点で既に列ではなく廊下いっぱいに人が広がって待っていただけで秩序なんてなかったけれど。)

あちらこちらで「俺が先だ!」「いや私だ!」といった感じの口喧嘩が勃発していたのだけれど、そんな喧噪の中でも敬虔なムスリムの方は甲板に出て絨毯を敷いてお祈りをしていた。

船の見取り図より
入国審査は『 i 』とあるカウンターで行われます
私達は見取り図の下側の甲板に突き出た階段から
この階に上がってきたので
この図の『 i 』の下側の@辺りで待っていたのだけれど
客室への出入り口があるこの図の上側Aにも人の列ができ
『 i 』の正面の上の階へ続く階段Bにも列ができてしまい
完全なる無秩序状態になってしまいました

ちなみにカウンターに窓口は4個か5個あり
この時点ではシャッターが降りていました

結局乗船してから1時間半くらい経った頃やっと船が動きだし、その後みんなが待ちわびていた入管の人がジーンズにセーターといった軽装で登場した。
そして幸運なことに私たちが待っていたすぐ近くの窓口のシャッターを開け始めたのだけれど、そのシャッターが途中でガゴゴゴという物悲しい音を立ててつかえてしまい、ガラガラガラピシャーンという音とともに閉じられてしまった。
そして今度は私たちから一番遠い見取り図の上側Aに近い窓口のシャッターを開け、いよいよ入国審査が始まった。

ここからはあちらこちらで「こっちが先に並んでるんだ!」「横入りするな!」といった感じで先程より激しく、よく乱闘が起こらないなという程の口喧嘩が勃発。
私たちが並んでいた前後の人達も、一斉に窓口に向かって猛突進する。

私たちはあまりの凄さに驚いて笑ってしまっていたのだけれど、入管の人を待っている間に「どこから来たのか?」とか「モロッコは初めて?」などと時々話しかけてくれていた前のほうにいたおじさんが「あなたたちはアラビア語が話せないんだから助けてあげる、ここに入りなさい」と後ろにいた私たちを自分の前に入れてくれて、後ろからグイグイ押して窓口に突き進んでくれた。

そしてそのおじさんは、私の前にいた男の人に向かって「おい!あんたがどんどん突き進んで行って、あんたの入国審査が終わったら、そのまま続けてこの日本人のパスポートを窓口に出すんだ」というような指示を出していた。(アラビア語だったので推測ですが。)
二人は知り合いではなさそうだったけど、おじさんの勢いに負けて、男の人もついつい「了解」的な返事をしていた。

これはまだ並んですぐの頃の入国審査待ちの列
(既に「列」ではないけど)

いよいよ窓口に近づくと、数十年前のオイルショックの頃のニュース映像の『トイレットペーパーにむらがる人々』よりすごい迫力で、窓口に向かって四方八方からパスポートを持った手が伸びてきていた。
そんな中、私たちの後ろに控えたおじさんはグイグイ押し込むのを忘れず、私の前の男の人も気合を入れて入国審査の係の人にパスポートをグイグイ差し出し、係の人の視線を捉えることに成功。
無事自分の審査を終え、おじさんの指示通り私のパスポートと入国カードを差し出すのを手伝ってくれた。

その間もずっと廻りの口喧嘩や怒鳴り声は絶えていなかったけれど、入管の人は多くの欧州の入管の人並みの笑顔で「ジャポン?コンニチワァ」と日本語で挨拶してくれた。そして慣れた手つきで入国カードをチェックしコンピューターに入力し、パスポートの写真と私の顔を見比べ無事入国スタンプを押してくれた。
そこで間髪入れず、おじさんが夫のパスポートを持つ手をサポートしてくれて、夫のパスポートも無事に入管の人の手に渡った。

夫の手続きの最中おじさんによ〜くお礼を言い、審査が終わった夫と二人、窓口に向かう人々にモミクチャにされながらその人だかりを抜け、なんとか無事に客室へ行くことが出来た。 (おじさんはちゃんと夫の次にパスポートを渡すことに成功していた。)
乗船してから3時間くらい経ってやっと客室に辿り着くことが出来た。

あの喧噪の中、入国審査が始まって1時間ちょっとでスタンプをゲットできたなんてなかなか上出来だ。
あの親切なおじさんがいなかったら、次々と横入りされてしまってまだあの人混みの中だったと思う。
おじさんは「いつもこんなに混乱している訳じゃないんだよ」と言っていたので、たまたま大混乱の日だったのかもしれないけれど(あの手続きが整然と進むのは想像しにくいけれど)貴重な体験で面白かった。(無事に何事もなかったから言えることだけれど。)
おじさんが客室に来たらもう一度ちゃんとお礼を言おうと思っていたのだけれど、違う客室に行ったのかその後はおじさんに会えなかった。

船内の案内
7階建ての大きなフェリーです
入国審査をしていたのは6階です

 この案内を見たら個室もあるようですが
この路線で運用しているのかは不明
私達は普通のチケットなので
大部屋の座席で指定席でもありません

乗船してから4時間半くらい(出航してからは3時間弱くらい)でタンジェの港に着いたようなので、みんなに続いて甲板に向かったのだけれど、港からのブリッジが伸びてくる気配もなくどこが出口か分からない。
人の流れに続いていくと駐車場に出てしまった。

そこでは係の人が前の方にいた乗客に「戻って」か「待って」といった感じの身振り手振りをしながら何か話していたのだけれど、先頭にいたおばさんが何やら係の人に文句を言っていた。
夫とここは出口じゃないのかもと話しているうちに車の下船が始まった。
それを見た先頭のおばさんが今まで以上の勢いで係の人に向かって怒鳴り出し、車の横を歩いて下船し始めてしまった。
そして他の皆もそれに続いて下船していき係の人も止めないので、私達もそのあとに続くことにした。

ピントが全く合っていないけれど
車の横を歩いて下船しました

船を下りた所には係の人が立っていて、一人ひとりパスポートをチェックしていた。
なかなか下船できなかったのは、この係の人が来ていなかったからで、それに対しておばさんが文句を言っていたのかもしれない。

本当はブリッジで下船しないといけないのにおばさんが強引に降りてしまい皆も続いてしまったのかなと思っていたけれど、この港から帰る時もこの車路から乗り込んだので、ルートが違うのではなくタイミングがちょっと早かっただけか、もしくはタイミングも早くはなくて、ちゃんと下に係の人が来たという連絡が入ってから下船していたのかもしれない。

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